全日本社会貢献団体機構

平成19年度開催のフォーラム

平成19年12月13日
社会貢献フォーラム「安心・安全な社会を目指して~社会・地域ができること~」

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会場 会場内の様子

全日本社会貢献団体機構では、埼玉新聞社、全国地方新聞社連合会と共同で『社会貢献フォーラム』「安心・安全な社会を目指して~社会・地域ができること~」を、平成19年12月13日、13時30分から、埼玉県さいたま市で開催しました。

このフォーラムは、「戦後60年経て日本は目覚しい経済発展をとげたが、残念ながら日本人の心の中に『他者のために何かする』『弱いものをみんなで支援する』といった精神が薄らいでしまっているのではないか。

丸山氏

そうした中で『社会貢献』ということが、これからの日本の社会作りの大切なカギをにぎる活動になるであろう。命を大切にする活動、青少年の健全育成に関わる活動は、今本当に必要とされている社会つくりの要である。では、社会や地域ではいったい何ができるだろうか。」という問題意識のもとで企画されました。

フォーラムは、2部構成で、埼玉新聞社代表取締役 丸山晃氏の開会のあいさつに続いて、第1部は国民的ヒット曲となった『千の風になって』の訳詩・作曲家の新井満氏から『命』にまつわるお話を『千の風になって』の誕生秘話を交えながらお話していただいたほか、松山市で開催された日本ペンクラブ「平和の日・松山の集い」の舞台で即興的に誕生した「この街で」にまつわるお話、『千の風』基金、母親の教え『人生三期説』、『社会貢献のススメ』などについて、ご自身の体験を含めて熱心にお話いただいた他、「千の風になって」と「この街で」の2曲を熱唱され、参加者に深い感銘を与えました。

第1部:対談[新井満×山根基世]

会場内の新井氏 山根氏

2007年最大のヒット曲のひとつ『千の風になって』の作詞・作曲者であり、自らもこの曲を歌っている、作家で作詩作曲家の新井満さんは、いわば2007年の“時の人”。
『千の風になって』でえられた印税やロイヤリティ収入の一部を投じて、「千の風基金」を設立。
いのちの大切さを説きつつ、平和や環境問題を中心に社会貢献にも積極的に取り組んでいます。

かたや山根基世さんはNHKを代表する女性アナウンサーとして活躍していましたが、この6月に定年退社。
同じNHK出身の広瀬修子さんや宮本隆治さんらとともに「ことばの杜」というグループを設立。朗読や読み聞かせをはじめ、ことばを通して社会貢献活動を行っています。

お二人は、同世代で、番組で何度か顔を合わせたことがあるとのこと。対談も、世間話や2007年に自らに起こったできごとなどを交え、終始なごやかに進みました。

山根 対談の様子私が子どものころには、自殺や犯罪につながるような、陰湿ないじめはなかったと思うんですが……。
同じクラスにお金持ちのお嬢さんがいて、おいしいものを食べたとか、高価な物を持っているとか自慢しているのを見て、多くのクラスメイトが「もう、あの子とは口を利かない」なんて言ったりしました。
これもいじめといえば、いじめなんでしょうが、2日か3日もすれば、すっかり忘れて、もとの仲のいいクラスメイトに戻ってしまう。
新井 陰湿であるかないかにかかわらず、いじめは時代や洋の東西を問わず、どの時代、どの世界にも存在してきました。
いじめを簡単になくすことはできないと思うんですね。私は、いのちの不思議さを説いて聞かせているんです。
自分には自分を生んでくれた母と父がいる。その母や父にも、それぞれ母や父がいるわけですが、これを10代さかのぼると、いまの自分が誕生するためには、1,000人の男女がいた計算になる。20代さかのぼると100万人ですよ。しかも、その100万人の男女が愛し合い、交わることで、初めていまの自分がここにいるんだと。
山根 自分のいのちは奇跡のようなもの。
新井 私の母は90歳になるまで助産婦として働いた人で、『常に人は、一人一人それぞれの役割を持って生まれてきている。天才は天才なりの、障害者も障害者としての役割がある。そのことをみんなが自覚し、思いやることで、いじめや虐待は無くなる』 それが母からの教えで、そんな母から私は生命の哲学を叩き込まれたんです。
山根 いじめや虐待を解決するヒントが、そこにあると?
新井 基本は愛だと思うんですね。いのちを慈しむ気持ち
新井氏

話しは、大ヒット曲『千の風になって』の話題にも……。
すると大サプライズ、新井さんがオリジナルバージョンの『千の風になって』、さらに新曲の『この街で』を熱唱。
満員の聴衆からの熱烈な拍手が会場に響きわたりました。


第2部:シンポジウム[山根基世×中村正宏×竹内健二×南聖祐]

シンポジウムの様子

第2部は、埼玉新聞社の「埼玉からいじめ・虐待をなくすために」キャンペーンを担当している竹内健二氏と大阪府遊技業組合連合会青年部会が20年以上にわたり実施している「未来っ子カーニバル」の責任者南聖祐氏から、社会貢献活動の取組状況を報告していただきました。

いじめや虐待が社会問題化して、およそ四半世紀。この間、官・民とも、この問題の解決のためにさまざまな試みを行ってきましたが、ほとんど成果は上がっていません。
今回のシンポジウムは、第1部に引きつづき山根基世さんの司会で、それぞれ異なった立場からいじめや虐待の根絶に取り組む3人のパネリストが参加。
それぞれの活動をご報告いただき、問題解決のヒントを探ろうという企画でした。

中村氏

埼玉大学教育学部附属教育実践総合センターの中村正宏教授は、長年、小学校という教育の現場で学童や生徒指導に携わってきた経験をふまえ、また、現在の研究をとおして、真正面からいじめ問題に取り組んでいます。

最近の学童の傾向として、中村教授は「基本的な生活習慣がきちんと身についていない」と指摘。その要因として、自然の中で遊ぶことが減ってしまったことによる“自然体験の減少”、核家族化の進行や生活パターンの変化による“生活体験の減少”、祖父母や親戚などとのふれあいが減ってしまったことによる“家族体験の減少”、学力や学ぶ意欲の低下などを上げました。

また、あいさつのできない子どもたちも多くなった、と。
そして、自然・人・本・家族・地域との関わりを広げていくことが、いじめ問題の解決のなんらかの糸口になるのではないかと見解を述べました。

竹内氏

竹内健二さんは、埼玉新聞社の「埼玉からいじめ・虐待をなくすために」キャンペーンを担当。現場の最前線から、埼玉新聞社が社を挙げて取り組んでいるキャンペーンの内容と成果を報告しました。

埼玉新聞社では、埼玉県内の小・中学校などに取材し、子どもたちの世界のなかでおこっているいじめの実態を把握。その分析や提言などを新聞の紙面で特集展開。
また、全日本社会貢献団体機構も制作資金の面での助成を行った「埼玉からいじめ・虐待をなくすために」キャンペーンハンドブックを制作。
県内の保育園・幼稚園・小学校・中学校に通う全園児・児童・生徒に配布されました。

県民にいじめが身近にあることを認識してもらうことで、社会全体でいじめ問題を解決するための第一歩を踏み出そうと訴えました。このハンドブックは、フォーラム参加者全員にも配布されました。

南氏

南聖祐さんは大阪府遊技業組合連合会青年部会長として、毎年クリスマスに行われている「未来っ子カーニバル」というイベントを指揮。
2006年には全日本社会貢献団体機構が設立した社会貢献大賞で、第1回の大賞受賞に輝きました。

「未来っ子カーニバル」は、クリスマスを両親とともに過ごせない施設の子どもたちを招き、参加型のイベントあり、ショウありの手づくりイベント。
昨年は大阪・なみはやドームにて、2,000人近くの子どもたちが参加して行われました。

直接、いじめや虐待の根絶を謳ったイベントではありませんが、参加者のなかには親からの虐待やいじめが原因で、施設に暮らす子どもたちも少なくありません。
また、このイベントには会場の近くにある高校の生徒たちがボランティアスタッフとして参加。高校生たちにとっても大切な体験の場を提供しています。

シンポジウムの様子

司会の山根基世さんが、3人の活動の発表をとおして、「ひとり一人が自分の持ち場で、いい仕事をしていこうとがんばりつづけていると、おのずと世の中はよりよいものになっていくんだと実感しました!」とこのシンポジウムを締めくくりました。

松尾氏

最後に主催者を代表して当機構理事の松尾守人から来場者、出演者、共催・後援を頂いたみなさんに御礼と、今後もこのようなイベントや助成事業等を積極的に実施して行くことを約束する旨の挨拶で、フォーラムを閉会しました。

その後、中村正宏埼玉大学教授の的確な分析などを交えて、「子どもたちの安心・安全な社会作り」の方向性を探り、参加者は熱心にメモを取るなど、課題の重大性を再確認していました。

なお、第1部の新井満氏との対談、第2部のコーディネーターは元NHKアナウンサーで「ことばの杜」代表の山根基世氏にお願いし、絶妙な進行・運営で、フォーラムの成功に多大な貢献をいただきました。

このページでは、当日の「フォーラム」の模様を採録しています。是非、ご一読下のうえご意見、ご感想をお寄せ下さい。

なお、平成19年12月28日付けの埼玉新聞朝刊紙上でも『フォーラム』の模様が採録される予定です。